中国輸入ビジネスにおいて「PL保険」は必要?不要?
今回は、中国輸入ビジネスなどの物販をやっているとよく耳にする、「PL保険」についてお話しします。
PL保険とは「生産物賠償責任保険」の事で、「日本国内で製造・販売された商品が原因で購入者の生命や身体に危害を及んだ、または所有物の破損等が起きた際、損害賠償金や裁判費用を補う保険」です。
要は自動車保険のようなもので、「自分の販売した商品が原因で問題が起きたときに補償してくれる保険」です。
任意で加入の義務はありませんが、結論から言えば筆者としては「ある程度売上がある方は加入しておいたほうが良い」と思っています。
このPL保険には商品の製造メーカーだけではなく、小売業者も加入でき、また企業だけではなく個人事業主でも加入できます。
このPL保険、実は特に中国輸入ビジネスを行う上で非常に大事な保険です。
基本的に商品で事故が起きた際の責任(生産物賠償責任)は、商品を作った業者やメーカーが問われます。
ということは、中国輸入ビジネスにおいても「製造メーカー」が責任を問われるのであれば我々販売側が保険に入る必要はないように思えますが…
ところが、ノーブランド品を扱うことが多い中国輸入ビジネスでは、その「製造メーカー」への責任追及が難しいケースが多いのです。
とはいえ、起きてしまった事故の責任は誰かが取らなくてはいけません。
そうなった場合、責任の矛先は輸入販売元、つまり我々セラーに向けられます。
自分が販売した商品から火が出て家が全焼したとか、誤飲で死亡事故が起き、ある日突然その責任を問われたらどうしますか?
日本であれば製造した工場に連絡を取ることもできますし、万が一工場側が無責任な態度をとった場合の対処法もいくつか考えられます。
ところが中国輸入製品の製造元は中国です。
言葉も慣習も文化も法律も違う。
そんな高い壁がいくつもある中国の業者相手に、徹底的に責任を追及できる人はまずいないでしょう。
となるとやはり責任の所在は、なし崩し的に販売した我々になるでしょう。
返品や交換で落ち着く問題ならまだしも、家の全焼や死亡事故になった場合賠償金を払いきれる人はまずいないはずです。
そうなれば事業はもちろん、人生も終わってしまうかもしれません。
こうした事態を想定して加入しておくのがPL保険です。
PL保険に加入したほうが良い人
保険は「入るか入らないか」で言えば、入っていた方が良いです。
商品1個売っただけでも、その商品で事故が起きれば責任は発生するからです。
ですが、例えば月の売上10万円~50万円程度の場合、事故が起きる確率やリスクと高い保険料が釣り合いません。
売上10万ということは、商品単価2,000円の商品を50個しか売らないわけです。
よほど危険な製品を販売していない限り、事故の起きるリスクはかなり少ないと言えるでしょう。
限りなく小さいリスクに多額の保険料を払うのは現実的とは言えない、要は「費用対効果が低すぎる」わけです。
あくまでも筆者の個人的な意見ですが、売上10万~50万程度の規模であれば加入しなくてもよさそうです。
特に中国輸入ビジネスは最初色々なカテゴリーを扱うことが多いため、扱うものが後から減ったり増えたりすることも良くあります。
そのたびに保険の内容を見直したり変えたりする手間も考えると、やはり規模の小さいうちは加入する必要はないかもしれません。
もちろん最初から「このカテゴリー・この商品1本でやっていく」という方は、最初からPL保険に入るという選択肢はありです。
一方で、売上ベースで月100万円以上ある方は加入の必要性が高くなります。
商品の平均単価が2,000円だとすると月500個、年間で6000個以上販売するわけですから、事故のリスクはやや高くなってきます。
また売上に関係なく、ガラス製品のように割れてケガしやすいものや、事故が起きやすいお子さん向けの商品を取り扱っている場合は早めに加入しても良いでしょう。
いずれにしても「加入するか・しないか」という2択であれば「絶対加入したほうが良い」ものです。
PL保険は完全任意ですが、自動車事故と一緒で1回の運転でも、1個の商品販売でも起きる時は事故が起きます。
もちろん限りなく確率が低いのに高い保険料を払うのは抵抗がある、という方も多いと思います。
そのため、「自分が扱っている商品や売上の規模とリスクを考慮して加入する」という形が良いでしょう。
先ほどのように、売上の規模と扱っている商品を加味し、多少なりともリスクがあると思えば加入しましょう。
ただし「加入する」と決めたら、即加入の手続きを取って下さい。
経験上、「入ろう入ろう」と思っていて、それでもなんだかんだ理由を付けて先延ばしにしているときに限って事故が起きるものです。
もし加入するのであれば、まずは周りにPL保険に加入している方がいないか聞いてみましょう。
中国輸入ビジネス仲間に聞いて回れば、一人くらい加入している方が見つかるはずです。
その人に業者を紹介してもらえば、良心的で信頼でき、さらに中国輸入ビジネス事情に詳しい業者や担当者と話ができる可能性が高いです。
弁護士や税理士と話をするときもそうですが、中国輸入ビジネスのようなやや珍しい業種は、内容を理解していない方に業務内容を説明するのがかなり厄介です。
そのため、最初から中国輸入ビジネスに詳しい業者と話をしたほうが説明や内容確認といった契約がスムーズです。
周りに加入している方がいなかった場合は、Googleで「PL保険 加入」と検索すれば業者のHPがたくさん出てきますので、各業者に見積もりを取ってみると良いでしょう。
商工会議所の会員になっていれば、そこから紹介してもらうこともできますが、対応が遅かったり、保険料が高かったりするので、筆者的にはおすすめできません。(一応聞いてみても良いと思いますが…)
なお、PL保険の保険料ですが、扱っている製品や売上の規模によって変動します。
自動車保険も、スポーツカーや若年層といったリスクの高いケースは保険料が高くなりますよね。
同様に、PL保険も刃物やガラス製品を扱っている場合や、事故のリスクが高くなる売上の大きいケースでは保険料が高くなります。
参考程度ですが、アパレルといった一般的な製品を扱っていて、年間売上1000万程度であればPL保険の保険料は年間数千円程度です。
売上1000万円あれば年間の利益は200~250万ほどあると思いますので、数千円の保険料も大して負担にはならないでしょう。
万が一事故が起きるとその賠償額は数十万、数百万、もしくはそれ以上になる可能性もあります。
年間数千円で恐怖とリスクに備えられるのであればむしろ安いくらいです。
保険の意味を考える
PL保険は万が一の事故の際、我々の事業や生活を守ってくれます。
それはすなわち、自分自身や家族を守る事にも繋がります。
さらに自分たちだけではなく、「事故に遭われたお客様の生活を守る」事もできます。
PL保険未加入の業者が重大な事故を起こしてしまえば、その業者はおそらく破産してしまいます。
すると事故に遭った方は賠償金を受け取れません。
ですが、もしPL保険に加入していれば賠償金はきちんと受け取れます。
賠償金でケガが治ったり、壊れたものが元通りになるわけではありませんが、ある程度安心して治療に専念できます。
つまりPL保険は「自分はもちろん、お客様含め商品に関わる全員を守るもの」です。
保険に加入することで、自分自身の安心とお客様の安心を得られるため、保険加入の旨を商品ページやショップページに記載し、お客様に安心して商品を購入して頂けるようにするのも良いでしょう。
なお、PL保険はあくまでも保険契約のため、当然ながら「加入していないと保険金は支払われない」点に注意が必要です。
当たり前のことを言っているようですが、実は販売業ではこれが盲点になります。
というのも、例えば商品の取り扱いをやめたとか、物販自体をやめて保険も解約したとします。
ですが、販売をやめても過去に販売した商品に対して責任は残り続けます。
「商品の取り扱いをやめる⇒保険解約⇒過去販売した商品でお客様がケガをした」
この場合、保険金が支払われなくなってしまいます。
他の保険と違う所で、「過去の責任も残り続ける」販売業の注意点と言えるでしょう。
PL保険を解約する際は、これまでの販売数や期間についてよく考えてから判断してください。
少なくとも商品の取り扱いをやめてすぐには保険を解約せず、しばらく加入したまま様子を見ることをおすすめします。
筆者はこれまで20年にわたり、数十万点以上の商品を販売してきましたが、PL保険を使う場面はありませんでした。
おそらく加入している方のほとんどが同じかと思います。
ですが、「だったら加入しなくてもいいのでは?」とはなりません。
保険は文字通り「万が一」に備えるもので、そんな万が一から自分やお客様を守るためのものです。
どんなに確率が低くても、事故は起きたらアウトです。
実際使ったことはありませんが、「もしかしたら使うかも…」という場面には何回か遭遇しました。
たまたま使わずに済んだだけかもしれません。
ただ、少なくとも「使うかもしれない」事態は確実にあったということです。
万が一を考えて、できる限り保険には加入しておくことをおすすめします。
少なくとも、保険に対して無頓着ではいけません。
製造や販売に携わる者として、「PL保険」についてきちんと認識しておきましょう。
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