中国輸入で売られている、違法ではないがグレーな商品について
世界の工場と呼ばれる中国から輸入できる商品には、様々なジャンル、無数の商品があります。
私たち中国輸入ビジネスをしているセラーは、この無数の商品の中から仕入れる商品を選び、輸入してAmazonや楽天で販売しています。
ところが中国で購入できる商品の中には「日本に輸入できない物」や「日本で販売できない物」が多数存在します。
例えば発火・爆発したり、人体に多大な影響がある危険物や、中国や他の国では合法でも日本では違法になる製品です。
代表的なもので言えば「PSE(電気用品安全法)」や「食品衛生法」に抵触する製品は必要な許可を取らなければ輸入・販売ができません。
許可を取るのはかなり大変なので、初心者や小規模事業者は手を出さないほうが良いでしょう。
このような輸入や販売ができない製品は、仕入れる前にきちんと調べることで避けられます。
そのため、よほど適当に輸入ビジネスをやらない限り問題は起きないはずです。
問題は「違法ではないがグレーな商品」です。
輸入も販売もできるが、商品としてはちょっと懸念点や問題があり、場合によっては大きな問題に発展しかねない「地雷商品」です。
こうした商品は違法な商品と違い、税関で止められるわけでも摘発されるわけでもありませんが、もし仕入れて販売すると大きなリスクを抱えることになります。
中国から輸入され、Amazonで販売されている商品の中には、今もこうした「違法ではないが危険な香りのする商品」を数多く見かけます。
今回はそんな「輸入・販売できるけどグレーな商品」について解説します。
法令に引っかからないけどグレーな商品とは?
タイトルを見て、「法律・法令に引っかからないのであれば問題ないのでは?」と思うかもしれません。
明確な法律上の線引きの話をすると、確かに法律で規制されていない商品であれば売っても逮捕されるようなことはありません。
ですが、「じゃあ中国輸入ビジネスで扱っても良いか」と聞かれたら、筆者としては「おすすめしません」とはっきりお伝えします。
最終判断は自分自身で行うべきですが、長年中国輸入ビジネスに携わってきた筆者としてはこうしたグレーな商品の取り扱いはNGにしています。
日本で商品を販売する際には、日本国が定めた「法律」は絶対守らなくてはいけません。
ですが、もう一つ、各業界団体が定めた「自主基準・自主規制」についても考えるべきです。
「自主基準・自主規制」は、販売にあたって強制力や制限が課されるものではありませんが、商品の安全性を証明するための大事な指標となります。
グレーな商品はこの「自主基準・自主規制」の検査や証明を行っていない商品を指します。
自主基準・自主規制とは
自主基準や自主規制は各業界が独自に定めたもので、代表的な自主基準・自主規制では、一般社団法人 日本玩具協会が定めている「STマーク」があります。
おもちゃのパッケージなどに、四角い枠で「ST」と書かれたマークが付いていますよね。
これがSTマークです。
これらのマークはそれぞれの業界団体に申請し、「業界の基準に従って作られた安全面に配慮した製品であること」事が認められれば商品に表示できます。
いわば各業界の団体が一定の安全性や品質を認めた証です。
ですが、法律に沿ったものではなく、あくまでも業界団体が独自に定めた物なので、マークが無くても販売を制限されたり罰則を受けることはありません。
販売者が申請しない限り、中国から輸入した商品には当然これらの自主基準や自主規制マークは付けられませんが、輸入・販売には影響ありません。
マークが無くてもAmazonや楽天、店頭などでごく普通の商品として堂々と販売できます。
ではなぜ自主基準・自主規制があるのか
法律上問題が無い製品なのに、なぜ各業界団体でわざわざ自主基準・自主規制を定めるのでしょうか。
これについては主に商品の「安全性」が関係してきます。
利用者が商品を安全に、安心して使用できるように定められたもの
法律の規制はあくまでも「明らかに危険性がある物」の排除を目的としており、「想定外の事故」に関して法律は関知しません。
例えば「自然発火するおもちゃ」は当然法律で規制しますが、「飲み込んだら窒息の恐れがあるおもちゃ」に関しては基本的に規制しません。
そんな想定外の部分まで線引きして規制してしまったら、商品が世の中に流通しなくなるからです。
ですが、商品の中には通常使用では問題が無くても、間違った使い方をしやすかったり、使い続けるうちに安全性に問題が出てくる商品もあります。
例えば「飲み込んだら窒息の恐れがあるおもちゃ」であれば、「飲み込みやすい大きさや形状をしたおもちゃ」が該当します。
こうした比較的起こりやすい事故の要因を減らし、利用者がより安全に商品を使用できるよう、より厳しい基準や規制を定めたものが「自主基準・自主規制」です。
従って、自主基準マークがついた製品は専門家による一定以上の安全性が確認された商品で、信頼性の高い商品だという証明になります。
ですが、このマークを取得するためには各業界団体の会員になり、使用許諾契約を結び、協会の定める検査をクリアしなくてはいけません。
時間もお金もかかるため、私たちのような個人や小規模事業者にはなかなか高いハードルです。
自らに自主基準・自主規制を課す
業界がわざわざ自主基準や自主規制という枠を設ける理由は、それだけその商品ジャンルで想定外の事故が起きているという現状があります。
法律上問題が無いからといって、上記のような事故のリスクが高い商品を仕入れ、むやみに販売するのは推奨できません。
万が一、健康被害や事故が起きてしまった場合、責任は販売者の私たちにあります。
ひとたび事故が起きれば、賠償問題や責任問題でビジネスどころではなくなってしまうでしょう。
そうならないよう、商品を仕入れる際は自分自身の中に独自の「自主基準ライン」を引き、リスクの低い商品展開を行うのがおすすめです。
ただし、この基準ラインをどこに引くかは非常に難しい問題です。
基準が緩ければ、先述のような事故リスクの高い商品を仕入れてしまいます。
逆に慎重になりすぎて些細な問題まで心配し、安全マージンを多く取りすぎれば仕入れられる商品が限られてしまうでしょう。
この悩ましい問題に対して、筆者は「健康や身体に重大な障害を招く可能性が低い商品」を基準に仕入れています。
「健康や身体に重大な障害を招く」とは、購入したユーザーが死亡したり、重大な健康被害やけがをするなど、取り返しのつかない事態です。
使用者が死亡してしまえばどんなことをしても取り返しはつきませんし、重大なケガであれば責任や賠償でビジネスが立ち行かなくなる可能性があります。
逆に、万が一事故が起きたとしても、命や身体に重大な影響さえなければクレームを言われたり、返品させられるくらいの責任で済むかもしれません。
このように、安全面に配慮して商品を仕入れることで、お客様の命や安全はもちろん、同時に自分自身と自分のビジネスを守る事にも繋がります。
商品を仕入れるのは自分です。
その仕入れには自分なりの安全基準を定め、責任を持って行いましょう。
販売されているグレーな商品
ここまで、自主規制・自主基準がない商品でも罰則などの強制力はないが、守った方が安心してビジネスを続けられる、という話をしました。
ということは守るも守らないも事業者の自由で、守る人もいれば、「自主基準や自主規制なんて守らなくても、商品が売れればそれでいい」と考えている人も一定数います。
そこで参考までに、筆者が見つけたグレーな商品を紹介します。
もし扱っているのであればできる限り早めに手を引くべきですし、これから扱おうと思っている商品があれば避けてください。
壁紙
部屋の模様替えなどに使用される壁紙は、一見何の問題もないように見えますが、実はグレー商品の多い商品です。
その原因は壁紙に使用されているシールの接着剤で、商品によってはこの中に化学物質「ホルムアルデヒド」が含まれています。
ホルムアルデヒドは発がん性があり、人によってはシックハウス症候群などのアレルギーを引き起こす可能性もある危険な物質です。
ですが、いまだにこのホルムアルデヒドの含有量を検査していない、つまりどのくらい含まれているか不明な壁紙が多数存在します。
安全な壁紙は日本工業標準調査会(JIS)の認定を受けた自主規制・自主基準の「F☆☆」~「F☆☆☆☆」マークが付いています。
もちろんこのマークの取得も大変ですので、小規模事業者が中国輸入等で壁紙を扱うべきではありません。
クレーンスケール
クレーンスケールとは、家庭用ではなく500kgや1000kgといった非常に重い物を吊り下げて重量を測定する道具で、「吊り秤(つりはかり)」とも言います。
このクレーンスケールも、業界の自主基準・自主規制の強度・耐久性チェックを受けていない商品は非常に危険です。
商品の特性上、ある程度強度や耐久性はあるにしても、本当に表示されている重さまで測って大丈夫かどうか、という確認や証明はしませんよね。
つまり中国輸入でこの商品を仕入れた場合、「中国の工場で確認しているはず」という非常にいい加減な保証で販売することになります。
このクレーンスケールを買う人は、当然数百キロ単位の何か重たいものを測るでしょう。
もしお客様が、あなたが販売したクレーンスケールを使って500kgの物を吊り、その最中に商品が破損して落下したら…最悪ケガでは済まないかもしれません。
その時、責任が取れませんよね。
このような重量物に使う商品は販売しないほうが良いでしょう。
グラビティブーツ
グラビティブーツとは、鉄棒状のバーに足首を固定し、逆さ吊りの状態でトレーニングを行えるフィットネスアイテムです。
もちろん落下しないようバーや足首を固定する器具には金属が使われており、それなりの強度はあります。
ですが先ほどのクレーンスケール同様、中国輸入されたものは強度の確認も証明もされていません。
耐荷重150kgの製品と書いてあっても、本当に耐久テストをしたのか、製造設計者の理論上数値なのか、希望観測数値なのかも判断できません。
もしこの商品の耐久性が低く、使用中に商品が破損した場合、使用者は逆さ吊りの状態で落下します。
当然頭から、それも重力と全体重の乗った状態で落下し、その衝撃が首や頭にかかり、重篤なケガやそれ以上の惨事になるかもしれません。
こうした事態を想像すると、筆者はとてもじゃありませんが怖くて扱う気にはなりません。
ネックストレッチャー
ネックハンモックやネックストラップとも呼ばれる、首を載せるハンモック状のパーツと、それを吊り下げるストラップで頚椎を伸ばすためのマッサージ器具です。
ストラップをドアノブなどに固定し、ハンモック上のパーツに頭を乗せて使用します。
これも強度の問題でストラップが千切れるかもしれませんし、ハンモックが外れるかもしれません。
その際、使用者は後頭部を床に強く打ち付けることになります。
後頭部は打ち所が悪いと、重大なケガや後遺症につながる大変危険な個所です。
また、そうでなくても首にかけて使用する商品は、窒息など他の危険性も高い製品です。
大型のフィットネス器具やヘルスケア商品に関してはグレーな商品が多いので、輸入する場合は慎重に行いましょう。
クライミング用アイテム
ハーネス/カラビナ/プーリー/スリングといったクライミング用品も要注意です。
これらのアイテムは登山などで壁や岩から落ちないよう自分の体をロープなどに固定したり、誰かを引き上げたりする用途で使用されます。
当然人間の全体重を支える製品ですので、強度が非常に重要となってきますが、これも個人では確認しようがありません。
もし使用時に破損した場合、使用者は何十メートルも落下し、岩にたたきつけられる可能性があります。
特にカラビナは安くて手軽な商品なので、初心者はうっかり手を出しそうになりますが、おすすめできません。
商品の事故は販売者にある
今一度自分が扱っている商品、もしくは扱おうと思っている商品を確認し、「これを売って本当に大丈夫か?」を確認しましょう。
有名メーカーの製品は、各業界団体の厳しい自主基準や自主規制検査をクリアしたものや、自社で厳しいテストを行った、安全性の高いものを販売しています。
一方、自主基準や自主規制のチェックを受けられない小規模事業者は、強度や安全性について確証も持てませんし、テストも証明もできません。
製造元の中国の工場に問い合わせれば「問題ない」と言うかもしれません。
ですが、他の国と日本人では「大丈夫・問題ない」の基準や価値観が異なりますし、中国の基準で問題はなくても、日本の基準で問題あるかもしれません。
つまり、中国工場側の「大丈夫」「問題ない」は何の保証にもなりません。
強度や安全性を証明できない、何かあった時に責任が取れないリスクの高い商品は、仕入れ段階、輸入段階で排除するしかありません。
販売した商品でケガや健康被害が起きたとき、責任を取るのは「大丈夫」といった工場ではなく、実際に販売した私たちセラー側です。
万が一の事故、万が一の廃業リスクを限りなく0にするためにも、「大丈夫」と確信が持てる商品だけを扱いましょう。
コメントを残す