中国・深センがコロナでロックダウン!!緊急事態の対処御法を学ぶ
当たり前の話ですが、中国輸入ビジネスにおいて中国は一番重要な拠点です。
中国で物が作れない、中国から商品を輸入できないとなった場合、ビジネスは完全にストップしてしまいます。
もちろんこの現代において、国同士の流通がそう簡単にストップしたりはしない…はずでした。
ところが先日、中国の中でも特に大きな物流拠点の一つである深セン(深圳市)がコロナで完全にロックダウンしてしまいました。
この都市が封鎖され、物流が完全にストップしたことで多くの商品が日本に入ってこなくなりました。
中国輸入ビジネスを行っていて、もし深センに自分が取引している工場や会社があった場合、大ピンチです。
中国のロックダウンは非常に厳しく、文字通り都市は「完全封鎖」されてしまうため、ロックダウンが解除されるまで一切商品が入ってこなくなります。
もしその間に手持ちの在庫が無くなってしまった場合、そこで売上がストップしてしまいます。
物販事業において、在庫は健全に経営を回す血液のようなものです。
人間の体で血液が滞ったら死ぬのを待つしかありません。
同じように物流事業で在庫が止まったら、あとは破綻を待つのみです。
コロナ禍では、このような事態は中国に限らずどこでも起こる可能性があります。
ですが、特に中国政府は今回のロックダウンのように、都市一つの機能を完全に停止させるといった日本では考えられないような対応を取ります。
深センほど大きなニュースにはなっていませんが、筆者独自の情報ルートでは中国の複数の街で強い人流制限や行動制限を行っているとのことでした。
中国では「ゼロコロナ政策」を取っており、コロナが完全に根絶できるまではあらゆる対策を「徹底的に」取っていくでしょう。
つまり、現在の中国輸入ビジネスの状況は、「今後も都市がロックダウンする可能性は高い」「いつ商品の仕入れが止まってもおかしくない」状態にあると考えておくべきでしょう。
また、中国の問題以外にもロシアのウクライナ侵攻による情勢不安や、燃料コスト高騰による輸送コストの増大、その他世界情勢の不透明さによる為替リスク…。
頭が痛くなるようなリスクの火種はあちこちに落ちています。
とはいえ、ビジネスに影響がないように祈るだけではあまりに消極的です。
それで在庫がストップして「商品がありません」なんて言っても誰も助けてくれません。
そのため、「万が一問題が起きた際にどう対応するか」を、常日頃からある程度考えておかなくてはいけません。
今回は深センの事例をもとに、「不測の事態に備える4つの施策とそれぞれのメリット・デメリット」について解説します。
施策1.在庫を多めに持つ
不足の事態に備えるために行う施策の1つ目が、一番簡単でシンプルな「在庫を多めに持つ」です。
ほとんどの人が最初にこの施策を考えるのではないでしょうか。
メリットは在庫が多めにあれば、多少仕入れが滞っても売上が落ちることはありません。
また、市場全体の物流が滞った状態で自分ひとりが在庫を多くもっていた場合、在庫切れを起こしたライバルたちの顧客がこちらに流れ込み、独占状態で大きな売上になるでしょう。
シンプルで効果的な対処法と言えます。
一方でデメリットは、過剰に在庫を持つことで、キャッシュフロー(資金繰り)が急激に悪化します。
現金や翌月の支払い等のキャッシュフローには十分に注意する必要があります。
ただ、過剰に在庫を持っても、在庫は徐々に売れていくため、商品が売れているうちは問題ありません。
怖いのは、過剰に抱えた在庫が突然売れなくなった場合です。
こうなると過剰在庫ではなく「不良在庫」になってしまいます。
こうなると資金繰りの悪化どころか、仕入れや翌月支払い用の資金が回収できなくなり、廃業・倒産の可能性が高くなります。
不思議なもので、不測の事態のために「いつもならするはずのない過剰在庫を抱えたタイミング」に限ってこういう想定外の問題が起こります。
在庫を多く持つ際は、キャッシュフローと商品の売れ行きに注意が必要です。
施策2.複数の代行業者と契約しておく
2つ目の施策が「複数の代行業者と契約する」です。
例えば、深センの業者と契約しているなら、同時に他の地域の代行業者とも契約しておく。
もし深センや他の地域で物流が滞っても、他の地域の業者を通して仕入れができるため被害を最小限に抑えることができます。
デメリットは、複数の業者を使うことで発注や納品全ての作業が煩雑になる事です。
代行業者は各業者で発注方法や納品形態が大きく異なり、また慣習や考え方も違います。
例えばA社は独自のネット発注システムから注文、一方でB社はエクセルシートで注文するといったように、注文一つ取ってもそれぞれやり方が異なるのです。
そのため、複数の業者と取引する際はすべての業者のシステムを覚え、対応して合わせる必要があります。
その作業が非常に効率が悪く、事業の生産性に大きな影響を与えます。
さらに複数契約にはもう一つ大きな「代行業者に優遇してもらいにくくなる」というデメリットがあります。
そもそも業者を分けるということは、単純計算で今までの仕入れを半分ずつにするわけです。
すると、各代行業者から「取り扱い物量の少ないセラー」、はっきり言えば「お得意様ではない」という扱いになる可能性があります。
当たり前の話ですが、どんなビジネスでも大口契約は大事にされ、様々な面で優遇されます。
取扱量が減ってお得意さまでは無くなると、発注や荷物のやり取りで他のセラーの注文を優先されてしまう可能性があります。
もし業者を分ける場合は、代行業者と密にコミュニケーションを取り、多少取扱量が減っても大きな影響が出ないよう根回しをしておく必要があるでしょう。
施策3.嵐が過ぎ去るのを待つ・耐える
3つ目の施策は何もせずひたすら耐えてやり過ごすことです。
冒頭で「祈っているだけではあまりに消極的」と書きましたが、消極的な施策にも実はメリットがあります。
待つ、つまり何もしないため、余計な労力や無駄な時間を浪費せずに済みます。
それでもし不安が杞憂に終われば、周りのセラーが緊急事態への備えでドタバタ右往左往する中、自分はいつも通りの仕事ができます。
デメリットは、万が一本当の緊急事態になった時に「何もかも手遅れ」になる可能性があります。
なんの手も打たずに嵐の中に飛び込んでしまった場合、ただただされるがままにダメージを受けるだけです。
かといって、嵐の真っただ中で今さら何かしようとしても取れる手段は限られています。
例えば高血圧を放置しておいて、脳梗塞になってしまってから生活習慣を見直しても意味がないですね。
「待つ」という選択肢を取る場合、「行動を起こすリスク」と「緊急事態が発生する確率」を天秤にかけながら、より可能性やリスクの少ない行動を取りましょう。
施策4.中国輸入以外のビジネスに切り替える
4つ目は、「他のビジネスに切り替える」です。
例えば「欧米輸入」「国内輸入」「転売」「輸出」と、物流ビジネスは中国輸入以外にもたくさんあります。
収入の柱が複数あれば、万が一中国輸入が止まってしまっても、他の事業でカバーできるでしょう。
さらに中国輸入以外のビジネスのノウハウも吸収できるため、それぞれの事業を育てていくことができます。
どの事業にも問題が無ければ複数のビジネスで並行して稼ぎ、いずれかの情勢が怪しくなってきたら他のビジネスに注力して収入への影響を最小限に食い止める。
複数事業はこうして臨機応変に立ち回り、あらゆるリスクに備えることができます。
株式の世界でも「卵は一つのカゴに盛るな」と言われているように、分散して事業を行うのはリスクコントロールの観点からも正しい施策です。
デメリットは一つの事業に集中しない分、各事業の成長は緩やかになります。
また、多角経営に注力するあまり、どの事業も「器用貧乏」や「どっちつかず」の中途半端な状態になってしまい、「自分のビジネスの方向性」が定まらなくなってしまいます。
最悪全部の事業で失敗をして、完全撤退の危険性もあります。
緊急事態への備えは平時にやっておくべし
今回4つの施策を提案しましたが、いずれも「施策」であって「正解」ではありません。
「大量に在庫を仕入れたことで機会損失を避けられた」というケースもありますし、逆に「大量仕入れしたせいで経営が傾いた」というケースもあるでしょう。
「余計なことをせず何もしなかったおかげで被害が最小限に抑えられた」というケースもあれば「何もしなかったせいで大ダメージを受けた」というケースもあるでしょう。
どんな対策をしても完璧はないから「不測の事態」なのです。
ただ、正解がないからと言って「不測の事態への備え」を放棄するのは絶対にNGです。
余裕が無くて大きな施策を取りにくいのであれば、小さな施策をコツコツ進めても良いでしょう。
・主力商品の在庫量を、気持ち程度増やしておく
・今の代行業者と信頼構築を築き、緊急事態にいち早く連絡をもらえるようにしておく
・他の代行業者に少量だけでも発注してパイプを作ったり、システムに慣れておく
などなど、「大きな負担なくできる不測の事態への備え」はいくらでもあるはずです。
いずれにしても、コロナ禍で先々が見通せませんし、コロナが無くても世界情勢でこれから何が起こるかなんて誰にも分りません。
「不測の事態・緊急事態はやがて必ず起こるもの」と考えて、今のうちからできることをやっておきましょう。
「備え」は普段からコツコツ行っておくから有事の際に役に立つのです。
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