ビジネスを始めて数年、この段階で税について振り返ってみる
今回は事業者として税金を自分で納めるようになって数年経った筆者が、ここで一度税金について振り返り、考えてみようと思います。
11月11日~17日は「税を考える週間」だそうです。
このコラムを読んで、皆さんも是非「税」というものについて考えてみてください。
そもそも「税金とは何か」ということを考えたことはあるでしょうか。
「半ば強制的に国に取られているお金」なんて思っている方も多いかもしれませんね。
ただ、税金は国が儲けるために徴収しているわけではありません。
税金の意味をかなりざっくりと要約すると、「国という自分たちの地域を支える会費」のようなものです。
国も会社も、もっと言えばそれぞれの家庭も存在を維持している構造は一緒で、何かしらの収入を得て、そのお金で必要なものを買ったり、経費を支払ったりして運営されています。
収入がないと会社はビジネスに必要な経費が出せなくなり潰れますし、家計は必要なものが買えず生活が破綻してしまいますが、それは国も一緒です。
私たちが普段利用している医療や介護などの社会保障システムを維持したり、道路や街、災害対策といったインフラを整備しているのは税金という国の収入です。
これら国が提供しているサービスや制度は、私たちが納めている税金によって支えられているのです。
例えば、日本は医療制度が非常に整っている国です。
けがや病気で救急車を呼んでも無料で病院まで搬送してくれますし、重大なケガや病気で数十万円以上の医療費がかかっても、高額医療制度で一定以上の支払いは免除されます。
※ちなみにアメリカで救急車を呼ぶと、地域によりますが数万円程度の費用が発生します
日本の医療制度は、ある程度所得の低い人も高い人も等しく同じような医療が受けられる、世界の中でも特に手厚い医療制度と言っていいでしょう。
こうしたありがたい制度が整っているのも、街が綺麗にインフラ整備されているのもすべて私たちが税金を納めているからなのです。
・収入に応じて一定の割合で納める「所得税」「法人税」
・車を所持・利用するとかかる「自動車重量税」「ガソリン税」
・住んでいる地域・地方に納める「住民税」「固定資産税」
・商品やサービスを購入した時に納める「消費税」
・遺産などを相続した時に納める「相続税」
・嗜好品にかかる「たばこ税」「酒税」
このように私たちは日々の生活の中で、常に何かしらの税金を納めていると言っても良いでしょう。
こうして私達が納めた税金は国を維持するため、国のサービスを維持するために使われます。
最近の例で言えば、国民全員が無料でコロナのワクチンを2回打てるのも、私達がきちんと税金を納めているからです。
税金を支払う覚悟を持つ
支払った税金によって国や国のサービスが維持され、その恩恵を受けられている、と考えれば少しは税金に良いイメージを持つのではないでしょうか。
「何となく国に徴収されている」と考えると、どうしても「払いたくない」「何とかしてごまかしたい」と考えてしまいます。
特に日本は累進課税ですので、所得が多くなればなるほど、稼げば稼ぐほど納める税金の割合が高くなります。
例えばサラリーマンの場合は所得に応じた税率が5%~45%に設定されているので、非常に多く稼いでいる人は、稼いだ額の半分近くを税金として納めなくてはいけません。
このように、人によっては年間の所得の何割も税金として納めているので、不満というか、納得できないという気持ちは分かります。
もちろん「1億稼いでいる人は半分持っていかれても5,000万円残るじゃないか」と言う意見もあるでしょう。
ですが、高所得の人たちにしてみれば、「努力して稼いだのに、多く稼いだという理由でより多く税金を取られるのは納得できない」なんて思うのも無理はありません。
本当のところは高所得者になってみないとわかりませんが、仕組みとはいえ当事者からしたら確かに納得は難しいかもしれません。
このように、「税」というものは、個人の事情や考え方で色々なとらえ方をされるものです。
ですがおそらく所得が高い人も、そうでない人もほとんどの人が「税金が高すぎる」「できれば払いたくない」と思っているはずです。
筆者も、昔は同じように税金に対して「毎回毎回こんなに取られるのか…」と大きな不満を持っていた時期もありました。
ですが、最近では「たくさん税金を納めると言うことは、それだけ国や社会に還元し、貢献しているんだ」と前向きに考えるようになりました。
世界の中でも社会サービスや各種制度、インフラ水準が高い日本で生活し、ビジネスを展開して稼げた対価として税金を納めたと思えば、自然と不満も小さくなります。
そして「今よりもっと稼いで、税金を納めても手元に多くのお金が残るようにしよう」と考えるようになりました。
すると不思議なことに、ビジネスも何となくうまくいくようになるのです。
・A「税金払いたくないから、何とかしてごまかせないかな…」
・B「頑張って稼いで、税金納めても手元にお金が多く残るようにしよう」
ビジネスがうまくいきそうな考え方はどちらでしょうか。
どう考えても前向きなBですよね。
税金を逃れようとか、隠そうとする後ろ向きな戦略しか出てこない人に、「収益を生み出す能力」は無いでしょう。
事業者が税金と付き合うための経営戦略
少し話は変わりますが、ここではうまく税金と付き合うための戦略についてお話しします。
事業者にとって税金、特に所得税は多額の現金での支払いが必要になります。
多くのサラリーマンの場合、所得税は会社が毎月給料から天引きしてくれるので、納め忘れたとか納める現金が無いと言うことはないでしょう。
一方で我々事業者は確定申告で自分の所得税額を確定させ、期限までに自分でタイミングを見て納めなくてはいけません。
その税金は自分のビジネスの利益の中から納めることになるため「税金を支払う時期やタイミング」は常に把握しておき、自分で管理する必要があるのです。
事業者によってはこの管理を怠り、納めなくてはいけない時期なのに現金が手元にない、なんて方もいます。
例えば利益すべてを仕入れに全力投資していると、税金を納めるための現金が手元になくなります。
逆に税金が来たからと言ってすぐに全額納めてしまうと、今度は仕入れのための現金がなくなる可能性もあります。
こういった状況にならないよう、経営者はキャッシュフローを常に把握しておき、事業経営に無理のない税金納付のタイミングを考えなくてはいけません。
経費を使うタイミングも重要
税金納付だけではなく、経費支払いなどもタイミングを調整することである程度キャッシュフローをコントロールできます。
例えば、パソコンなどの比較的高額な備品や設備の購入を検討しているとします。
これを決算後(個人事業主であれば12月31日以降)に購入すると、その経費は来期の経費になるため、決算前の経費として計上することができません。
つまり「多額の経費が出ていく上に、その年に納める所得税は減らない」状態です。
一方で、決算前(個人なら12月31日以前)に購入すればその年の経費に計上できるので、納める税金が減ります。
「多額の経費は出ていくが、その年の所得税は減る」状態にできます。
もちろんいつ買っても経費としては計上できるので、その年の所得税が減るか翌年の所得税が減るかの違いしかありません。
ですが、特に初年度の規模の小さい事業者はそのわずかな現金の増減ですら厳しい状況にあるかもしれません。
そんな時、こうした「支払いのタイミング」を知っておけば、少なくとも出ていくお金を多少コントロールできます。
こうした「お金を自分でコントロールする」意識を持っておくと、あらゆる場面で先読みができるようになり、お金の支払いに追われない余裕を持った経営ができるようになります。
節税と脱税は違う!
さて、ここまで読んだ方の中には少しは税金に対してイメージが変わった、という方もいるのではないでしょうか。
もちろんそれでも納める税金は1円でも少ないほうが嬉しいですよね。
税金を逃れようとか、収益を隠そうとするいわゆる「脱税」は犯罪ですが、定められた制度を正しく利用して納める税金を減らす「節税」は我々の「権利」です。
脱税は絶対やってはいけませんが、正当な権利である節税はどんどんやるべきです。
例えば所得税は「売上―経費=所得」の「所得」にかかるものですので、仕事に使った経費を正しく計上すれば、納める税金(所得税)が減らせます。
ただし、仕事に使っていないものまで経費計上して税金を減らすのは、節税ではなく脱税ですので絶対やってはいけません。
その他にも各種控除など、節税するための仕組みは沢山ありますが、これらの節税テクニックの多くは自分で調べて申告しないといけません。
申告を忘れたり、知らなくて申告していない場合、国や地方自治体が親切に税金を減らしてくれることはありません。
節税できる余地あるのに、それを知らずに言われるがままの税金額を納めるのは利益を垂れ流しているのと一緒で、非常にもったいない事です。
複雑な税金については専門家の税理士さんに頼る
税金や節税対策の仕組みは非常に複雑で分かりにくく、何期もビジネスをしている筆者ですら完全に把握しているわけではありません。
もしこれを一人で全部把握・対処しようと思ったら本当に大変ですし、そんな時間があるならその分1個でも商品を仕入れて利益に変えたいと思っています。
そこで餅は餅屋、税金のことは税の専門家である税理士さんにお願いしてしまうのがおすすめです。
税理士さんと契約すれば、契約内容にもよりますが面倒で複雑な確定申告などは全部代行してもらえますし、難しい節税対策もすべてやってもらえます。
もちろん少なからず費用がかかるので誰にでもおすすめ、というわけではありませんが、規模が大きくなってきたり、法人化したらお願いするべきです。
契約までしなくても、税についてわからない事や知りたいことがあれば相談にも乗ってもらうことも可能です。
税理士さんによっては短時間の相談が無料だったり、また自治体では決まった日に税理士さんへの無料相談日なども開催しているので、うまく活用しましょう。
最後に
程度の差はあれ、「国」という枠組みで生きている以上、税金は必ず納めなくてはいけません。
「税金から逃れよう」とか、「税金を徴収されている」なんて考えるより、「たくさん稼いでしっかり払おう」とか「税金とうまく付き合っていこう」と考える方が健全です。
そのほうがストレスも溜まりませんし、余計なストレスから解放されて思考がシンプルにビジネスに向かうため、事業もうまくいくようになります。
もちろん今回の記事は筆者個人の考え方なので、強要はしません。
ですが、何度も言うように「国に住んでいる以上、税金からは逃れられない」のです。
嫌がっても、喚いても、愚痴をこぼしても、「税金を納めなくてはいけない」という事実は変わらないのです。
であれば、開き直ってむしろ堂々と納めて誇るくらいほうが経営者としても国民としても素晴らしいのではないでしょうか。
税金を多く納めることは「ビジネスで成功している証」です。
税金を前向きにとらえ、うまく付き合って経営や自身のメンタルをコントロールしましょう。
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