FBA在庫保管制限と在庫パフォーマンス指標について
先日、Amazonから、「次の四半期におけるFBA在庫保管制限の調整」のメールが届きました。
これは、四半期ごと定期的にAmazonから送られてくるメールで、いわゆる「在庫パフォーマンス指標の査定」です。
在庫パフォーマンスとは、FBAに納品した商品が健全に売れているか、在庫が適正に回転しているか、つまり「Amazonにおける優良セラーかどうか」を数値化したものです。
この在庫パフォーマンス指標が一定の基準数値を下回ると、Amazonから「優良セラーではない」と判断され、FBAへの納品に一定の制限がかかってしまいます。
要は「FBAに商品を納品できない」状態になるため、当然新しく商品をAmazonに並べることができず、売上は下がってしまいます。
その場合FBAを使わず自己配送という方法もありますが、商品数の多い中国輸入ビジネスにおいて自己配送は現実的ではありません。
この厄介な納品制限を回避するためにも、在庫パフォーマンス指標はできる限り高く保っておくようにしましょう。
今回はFBA在庫保管制限と在庫パフォーマンス指標について解説します。
FBA在庫保管制限とは何か?
AmazonのFBA倉庫に送れる商品数は無限ではありません。
膨大な敷地を持つAmazonFBA倉庫といえども、日本中のセラーが制限なく商品を納品したらすぐに満杯になってしまいます。
特に「売れない商品」が大量に納品されてしまうと、FBA倉庫の保管スペースを占領し続け、販売手数料による利益も出ません。
Amazonとしてはこういう状況をできる限り避けたいわけです。
そこでAmazonが実施しているのが「在庫パフォーマンス指標」の設定と、その指標が低いセラー(商品回転率の低いセラー)にかける「納品制限」です。
制限でよくあるのが、一定以上の在庫納品ができなくなる「在庫補充数量制限」で、これは同一商品に対して一定数以上の補充ができなくなる制限です。
ただし、この制限は商品が売れて在庫が一定まで減れば、減った分また納品・補充できるようになります。
一方で、今回冒頭で触れた「FBA在庫保管制限」は、もしかけられてしまうと「特定の商品が納品できなくなる」というもので、売れて在庫が減っても補充できません。
もし商品が売れて、追加で在庫を補充したくなってもできないわけです。
こうした制限は、主に「在庫パフォーマンス指標」の数値を、Amazonが規定した基準値に照らし合わせて査定されます。
よって在庫パフォーマンス指標が高ければ高いほど制限がかかりにくくなり、低ければ低いほど制限がかかりやすくなります。
もしこの指標が低く、制限がかかりそうになったら赤字処分や、過剰在庫を自宅に返送してもらうなどして在庫を消化し、指標を改善して制限を避ける必要があります。
とはいえ、それは最終手段です。
できれば日頃から在庫パフォーマンス指標を高い水準で維持し、Amazonから制限をかけられないようにして売上を維持するのが一番です。
在庫パフォーマンスと数値を維持する方法については、以下のAmazonのサイトを参考にしてください。
https://sellercentral.amazon.co.jp/gp/help/external/help-page.html?itemID=202174810&language=ja_JP&ref=efph_202174810_bred_GZJF4DY2W6MERBAL
この内容をかなりざっくり説明すると、「商品を納品してどんどん売って、倉庫の回転率を上げていけば在庫パフォーマンス指標が上がる」わけです。
在庫パフォーマンス指標と納品制限の関係について
今回私がAmazonから受け取った、冒頭のメール「次の四半期におけるFBA在庫保管制限の調整」の内容を要約すると以下のようになります。
「現在出品者様の在庫パフォーマンス指標は485です。480以上の場合、標準サイズ・大型・服・シューズの在庫について在庫保管制限は適用されませんが、在庫補充数量制限の対象になります。」
この内容だと、「485は悪くないから在庫保管制限まではしないけど、良くもないから補充制限はかけるね」といったようにも取れます。
となると、もう少し在庫パフォーマンス指標のスコアを上げれば、まったく制限がかからなくなるのでしょうか。
答えはNoです。
というのも、実は筆者はAmazonの出品アカウントを複数持っています。(個人の複数アカウントは規約違反ですが、法人は複数アカウントが持てます)
その中の一つが在庫パフォーマンス指標523なのですが、結局「在庫保管制限はしないけど、補充制限はかかりますよ」というほぼ同じような内容のメールをもらいました。
ただ、スコア485のアカウントと違う点が1つあり、523のほうには文面の中に「在庫パフォーマンス指標のスコアが{allocationThreshold}以上」という一文があったことです。
「allocationThreshold」というのは、日本語で言う所の「割り当てしきい値(設定基準値)」です。
つまり在庫パフォーマンス指標523のアカウントは、Amazonの設定した「優良セラー認定のパフォーマンス指標の基準値」を超えているわけです。
※あくまで、この時のしきい値です。しきい値は都度変動します。
在庫パフォーマンス指標500は、非常に優良なセラーの数値です。(ちなみに485もかなり優良です)
そのため筆者は、Amazon販売を人に教えるときも必ず皆さんに「在庫パフォーマンス指標500を目指しましょう」と伝えています。
ところが、先ほどのメールを見る限り、500を超えた優良アカウントでも補充制限はかかってしまいます。
つまり「在庫パフォーマンス指標が高いだけでは補充制限までは解除してもらえない」と考えたほうが良さそうです。
以上のことから、制限だけの話をするならば、在庫パフォーマンス指標は523でも485でもそれほど大差ないわけです。
それでも筆者は一貫して「在庫パフォーマンスは500以上」を推奨しています。
Amazonが設定している基準値、「allocationThreshold」(この時点では500以上)には、必ず意味があると思っているからです。
Amazonが制限に基準値を設けている理由について
Amazonでは、今までもこの在庫パフォーマンス指標の数値を基準に、色々な施策を盛り込んできました。
ということは今後もこの数値を基準に何かしらの制限をかけたり、逆に指標の高い優良セラーに何らかの優遇策を出してくる可能性があります。
ひょっとしたら、先ほどの「在庫保管制限」のような、Amazonで販売している事業者にとって致命的なダメージを負う制限が盛り込まれる可能性だってあります。
そんな時、慌てて在庫パフォーマンス指標を上げようとしても遅いです。
在庫パフォーマンス指標は、短時間で一気に改善するものではありません。
そのため、常日頃から500を目標に、できる限り高い指標を維持できるようにしておくのがベストです。
ただ、勘違いしてはいけないのが、「数値の維持」が目的ではないという点です。
在庫パフォーマンス指標の維持は、あくまでも「健全な経営」のための手段の一つにすぎません。
数字を意識するのはもちろん大事ですが、数値のみにとらわれて大きな目的を見失ってはいけません。
在庫パフォーマンス指標を維持できている状態は、言い換えればAmazonにおける在庫の回転率が高い、在庫の健全化ができている状態です。
ということは、健全な在庫状況を保ち、順調に売上を伸ばしていれば、指標の維持を目指さなくても自然と在庫パフォーマンス指標は上がっていくでしょう。
つまり「在庫パフォーマンス指標を上げるよう意識する」のではなく、「在庫の健全化、経営の健全化を意識して進めることで、結果在庫パフォーマンス指標が上がる」が本来正しいのです。
在庫の取捨選択を正しく判断する
最後に、在庫の健全化のヒントとなる「在庫の取捨選択」についてお話しします。
おそらく中国輸入ビジネスを行っているほとんどの方は、膨大な種類、数の商品を扱っているはずです。
もちろん皆さんはその商品すべて「売れるはず」と、自信を持って仕入れていると思います。
ですが沢山の商品を扱うビジネスモデルでは、どうしても「売れる商品」と「売れない商品」が出てきます。
もちろん売れない商品ばかりは困りますが、販売ビジネスにおいて、こうした売れ筋のばらつきはごく当たり前に起きる現象です。
ビジネスの世界に「80:20の法則」というものがあります。
これは「売上全体の80%は、商品全体の20%の商品が作っている」というものです。
売上のほとんどは、たった2割の商品で稼いでいるのです。
ということはあとの8割の商品は売れない、もしくは売れ行きが悪く、あまり売上に貢献していない商品です。
もし売上が頭打ちになってきたらこの80:20の法則に従い、思い切って8割の商品を在庫処分してみてください。
一時的に利益は下がりますが、きっと後々売上が伸びるはずです。
ただ、実際に不良在庫を抱える立場になって見ると、この在庫処分の決断は容易ではありません。
言われるまでもなく、理屈では「8割の不良在庫を処分して他の商品を仕入れたほうがいい」とわかってはいるはずです。
ですが「いつかは売れるかもしれない」「時々ちゃんとした価格で売れている」と思ってしまったら、きっと処分の決断は簡単には下せないでしょう。
これが多くのセラーが陥っている「取捨選択ができていない状態」です。
同じセラーとして気持ちは痛いほどわかりますが、そのままにしておくと、やはりずっと8割の売れ行きの悪い商品を抱えたまま事業を続ける羽目になってしまいます。
不良在庫、動きの悪い在庫を把握し、スパッと処分する判断を下せるようにならないと回転率・利益率は上がらず、売上も在庫パフォーマンス指標も改善しません。
8割の不良在庫商品を思い切って切り捨て、主力の2割の商品や次の主力商品探しに資金と労力を投入したほうが、はるかに将来的にはプラスになります。
そしてこの改善を繰り返すことで、事業も在庫パフォーマンス指標も必ず改善するはずです。
物販ビジネスにおいて、回転しない在庫は基本的に「悪」です。
必死になってリサーチし、苦労して、そしてお金を出して仕入れた商品を処分するというのは非常に辛い決断ですが、それをしないといつまでたっても売上は伸びません。
在庫パフォーマンス指標は冷静に(ある意味非情に)それを教えてくれる、客観的な数値です。
人相手の場合、感情は大事にしなくてはいけませんが、商品やお金に対しては感情を捨て、淡々と冷静に数値で判断するのがビジネス成功のカギです。
最後に
今回は在庫パフォーマンスによるFBA在庫制限や、在庫パフォーマンスを改善するための取捨選択について解説しました。
在庫パフォーマンス指標を気にしてビジネスを進めるのは、数字が苦手だとか、自分のビジネスのやり方を邪魔されているようで抵抗がある、なんて方もいるかもしれません。
ですが、「第三者の客観的な指標」というのはビジネスにおいて非常に強力な情報です。
甘さも悪意もなく、自分にとって足りないもの、必要なものといった「現実」を冷静に教えてくれます。
せっかくタダで教えてくれる有益な情報ですので、しっかりと利用し、自分のビジネスの糧にしましょう。
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