本当にあった嘘のようなAmazonでの返品事例
中国輸入ビジネスに限らず、「物を販売する」ビジネスにおいて切っても切り離せないのがお客様からの「返品」です。
返品は、文字通りお客様に送った商品が何らかの理由で戻ってくることを指します。
物販では必ず発生する事態ではありますが、せっかく販売した商品が戻ってくるというのは何度経験しても複雑な気持ちになります。
もちろん買った商品をわざわざ梱包し直して配送する手間をかけてまで返品しようというのですから、お客様からしたら、商品にきっと大きな問題があることがほとんどです。
販売した商品、もしくはこちらの対応に何らかの問題があれば返品に応じるのは当然です。
ただ、ごく一部ではありますが、お客様の中には、こちらが納得できないような「とんでもない理由」で返品を希望するような方もいます。
今回は、Amazon販売と返品の関係の解説、そして後半では筆者が実際に体験した「とんでもない返品事例」を紹介します。
物販では、時折びっくりするようなお客様に出会うことがあります。
そんな時に冷静に対処できるよう、様々な事例について知っておいてください。
Amazonのスタンスは「お客様がすべて正しい」
Amazonは元々アメリカの企業なので、企業姿勢も日本の企業とは異なる点がいくつもあります。
そのうちの一つが「返品に対する対応」です。
通常の日本企業であれば、返品された商品をきちんとチェックし、企業や製品に問題があったかどうかを確認したうえで返品・返金に応じるところが多いです。
しかしAmazonでは商品の状態や理由を問わず、「まずは返品・返金に応じる」というスタンスを取っています。
というのも、実はアメリカは「返品大国」で、日本では考えられないほど返品が容易な文化の国です。
例えばAmazonだけではなく、超大型会員制スーパーコストコも付属品が揃っていればほぼ無条件で90日間以内の返品を受け付けています。
ちょっと悪い考え方をすれば、家電をちょっと試して返品、なんてことも可能になっています。
この容易な返品制度、日本のAmazonやコストコでは特に今の所大きな問題にはなっていません。
ところが本国アメリカでは、洋服を1日着て返品したり、家電製品を1回使って試して返品するお客様が後を絶たず、大きな社会問題となっています。
ちょっと話がずれましたが、要はAmazonなどのアメリカ企業は「お客様からの返品に寛容」な所が多いわけです。
特にAmazonでは数年前までお客様からの返品は理由如何を問わず、返品・返金を認めていました。
Amazonは巨大なサイトで、毎日無数に来る返品申請を1個1個チェックしていたら効率が悪いので、「まずは返品に応じる」というのは効率的なやり方なのかもしれません。
ですが、お客様がその制度を悪用した場合、我々セラーはたまったものではありません。
セラーからしたら、自分たちの対応や商品に落ち度が無くても、お客様から返品申請されたら有無を言わさず返品され、しかも販売手数料とFBA手数料は取られるわけです。
冒頭でもお話ししましたが、こちらの落ち度なら返品も納得できます。
ですが、お客様の「気に入らなかった」「やっぱいらない」といった自己都合な理由でも無条件で返品が成立してしまうのは到底納得いきません。
現在では、お客様の自己都合の場合は返金額が減額になることもあるので、状況は少し改善されたと言えます。
ですが、自己都合だと減額されると分かっているお客様は理由を正直に申告せず、セラー側に落ち度があるように連絡して全額返金を画策するケースも後を絶ちません。
アメリカでは返品詐欺が社会問題になっている
この「とにかく返品を受け付ける」という姿勢は、良心的な消費者からすると都合の良いシステムですが、悪用する方にとってはもっと都合の良いシステムです。
ここまで読んだ方の中にも、「こんな方法で返金してもらえるんじゃ…」なんて悪用方法を思いついた方もいるはずです。
先ほども少し解説しましたが、本国アメリカではこの返品制度が大きな社会問題になっています。
例えば以下のニュースを見てください。
アメリカのAmazonで、緩い返品制度を利用して購入・返品を繰り返し、計3000万円もの詐欺を働いていた男が逮捕された、というニュースです。
もちろん犯人は多額の賠償金が課されたうえ、さらに長期の禁固刑が言い渡されるそうです。
さすがにアメリカでもこれだけ悪質な返品を繰り返せば逮捕されます。
ただ、この事件は額が大きかったために逮捕まで至った事例です。
手厚い返品制度の文化が根付いているアメリカでは、逮捕まで行かなくても、詐欺同然、もしくは詐欺すれすれの事例は数多く起こっています。
・観光客が現地でシュノーケルを買い、1日しっかり遊んで使った後に返品する
・高級ドレスをデートの日に1回着た後に返品する
・調理家電をホームパーティの日に1回使ったあと返品する
このような事例は枚挙にいとまがありません。
これも手厚い返品体制を悪用した、詐欺に近い(筆者的には詐欺に分類されますが)行為と言えるでしょう。
もちろんアメリカであっても「ちょっと使ってみたけどイマイチだった」とか、「合わなかった」といった自己都合による返品をすべて無条件で受け付けているわけではありません。
例えばAmazonでは、自己都合の場合は一定額の金額を差し引いて返品を受け付けるといったの対策は取っています。
こうした対策によって、我々販売セラー側の負担を軽減したり、お客様の安易な返品を抑止しています。
ですが、それはあくまでもお客様が「自己都合です」と、正直に申告して下さった場合の話です。
例え自己都合でもお客様が「不良品」と言い張ってしまえば、Amazonとしては「商品の不良」で処理することがほとんどです。
このAmazonの対応は、出品している側の筆者からすれば納得がいかないケースも多々あります。
返品された商品の中には、こちらの責任となっていても実際に商品をチェックすると「これは完全に自己都合でしょ…」といったものもたまに紛れてきます。
現在でもきっと多くのセラーがこの問題に悩まされていると思いますが、Amazonで販売する以上、ある程度許容する必要があります。
また、毎回返品の度に「自己都合」なのか「不良品なのか」を1個1個調査し、異議を申し立てるのも時間的にも労力的にも大変です。
そのため筆者を含め多くのセラーが「こんなことに時間を使うくらいなら1個でも商品を販売したほうが前向き」と考え、返品の対応や判断をAmazonに完全に任せています。
いままで理不尽な返品に遭ったことが無い方や、これからAmazonで販売しようと考えている方は、この点についても留意しておいてください。
筆者が経験した「とんでもない」返品事例
実際に筆者が体験したあり得ない返品事例を5つ紹介します。
まだこうしたとんでもない返品事例に遭ったことが無い方は、「本当にこんなことも起こるんだ」と思って読んでみてください。
事例1.「一部のみ返品されてきた」
5個で1セットの商品を販売したお客様から「商品に破損があった」と商品が返品されてきました。
破損理由をチェックするために現物を確認すると、返品されてきたのはなんと破損した1個だけ。
残りの4個はお客様の手元に残ったままです。
筆者の感覚では、「返金する場合は商品すべてを返すのが当然」と思っていたので、非常に驚きました。
しかもAmazonではこれを「全額返金」として処理したのです。
5個中4個、つまり商品の80%が戻ってこないのに、お金は100%返金されるなんて納得いきませんよね。
当然私はAmazonのテクニカルサポートセンターに連絡し状況を説明。
結果、半額の返金に変更になり、私の所には商品代金の50%が返金されました。
とはいえ、商品の80%はお客様のところで、私には50%分の代金。
結局赤字であることには変わりません。
事例2.「重要なパーツが無い」
この時はお客様から「商品内容が不足」との指摘で返品された商品でした。
現物を確認して見ると、確かにパーツがありません。
通常ならここで「大変申し訳ないことをしてしまったな…」で終わりなのですが、この時はかなり不自然な状況でした。
というのも、その不足していたパーツは、その商品の要ともいえるもので、車で例えればハンドルやタイヤに該当する超重要パーツです。
つまりそのパーツが無いとそもそも商品として成立しないのです。
そんな欠品があれば、納品の時点で我々の方で気づきます。
繰り返しになりますが、商品の要ともいえるべき重要なパーツなので、検品時に見逃すわけがありません。
もちろん筆者側の検品見落としの可能性も絶対ないとは言い切れませんが、99%ありえません。
穿った見方をすれば、お客様がその商品の重要パーツだけ抜いて返品したとか、もしくは紛失してこちらに責任をなすり付けたのか…。
これも最初は全額返金でしたが、テクニカルサポートに連絡するとわずかですが返金されました。
とはいえ、返品された商品はもう売り物になりませんし、完全に赤字です。
「パーツが欠品している」というクレームはこちらで確認を取りにくく、全額返金されやすい事例です。
それを知ってて悪用するお客様も0ではありません。
この時のことはいまだにモヤモヤしています。
事例3.「未開封なのに破損で返品された」
この時はお客様から「商品が破損している」とのことで戻ってきた商品ですが、それはどう見ても「未開封」でした。
外装にダメージはなく、テープをはがした跡もありません。
この状態で中身が破損してるかどうかなんて、X線検査でもしない限り分からないはずです。
そもそも中身が壊れるような商品ではありません。
つまりお客様は、中身を見ていないのに破損しているという理由で返品をしてきた可能性が高いわけです。
おそらくですが、自己都合での返品だと全額戻ってこないので、こちらに責任を押し付けてきたのではないかと思われます。
買った後にいらなくなったのか、他でもっと安い同じような商品の見つけたのか、理由は本人にしかわかりませんが、これもびっくりする事例でした。
事例4.「使用済みどころか補修済み」
以前私は新品のゴルフクラブを扱っていたのですが、とあるお客様からあるゴルフクラブが「未使用」扱いで返品されてきました。
ところが返品されたグラブを見ると、明らかに使用した形跡があります。
おそらく試し打ちをして、やっぱりしっくりこなかったから返品、という流れではないかと思います。
これも先ほどの事例同様、一度使った後の返品だと自己都合扱いで全額返金されないので、未使用ということにしたのでしょう。
ですが、ゴルフクラブは試し打ちをした程度でも、底(ソール)や打面(フェース)に跡が残り、確実に使用したことがバレます。
ここまではたまにある返品事例で、さほど驚きはしないのですが…。
このお客様のすごい所は、その試し打ちの痕跡を自分で補修して、未使用として返品してきたのです。
しかもその補修というのが、ソールの傷跡をマジックで塗りつぶしたり、フェースのボール跡を洗剤のようなもので擦って消そうとした痕跡が見られる素人レベルの補修です。
もう少し言うと、素人でももう少し綺麗に補修すると思いますが…いずれにしても全然ごまかせていません。
この商品はFBAではなく自己発送の商品だったので、直接お客様に連絡をしたところ、使用した後の補修を認めたため再発送することで合意、という決着になりました。
とはいえ再発送分の送料はこちら持ちで、その分の利益が目減りしました。
こちらに落ち度がない以上、本当はこの再発送分の送料も負担してほしかったのですが、これ以上こじれても面倒なのでこちらで負担しました。
こんなずるいことを考える、そしてこの程度の補修でごまかせると思っているところがすごいな、と感じた事例です。
事例5.「明らかな使用済み」
事例4もずさんな隠ぺい工作でしたが、さらにずさんな隠ぺい(隠ぺいと呼べるかどうかも疑わしいですが…)事例です。
この時販売したのは猫用のベッドです。
お客様から「商品の不足」で返品されてきたそのベッドを取り寄せて確認したところ、「商品の不足」が嘘だとすぐにわかりました。
袋を開けた瞬間に強烈なペット臭と、大量の猫の毛が舞ったからです
ベッド自体も毛だらけだったため、猫アレルギーの筆者はすぐに鼻や目が反応してしまいました。
見た目、物証(猫の毛)、そして筆者の猫アレルギーセンサーから判断して、明らかに使用済、それも試した程度ではなく数日間しっかりと使っているのは間違いありません。
商品の状態から、猫はけっこう気に入ってたと思うので、返品する理由はちょっとわかりません。
いずれにしてもこれもおなじみの「自己都合だとお金が全額返ってこないからセラーのせいにしてしまおう作戦」だと思われます。
その発想と、実際に行動に移す神経が信じられませんし、どうせやるならコロコロをかけるなど、もうちょっと綺麗に隠ぺい工作すればいいのに…とかなり複雑な心境でした。
このように、Amazonで長く販売を続けていると、時々とんでもないお客様に遭遇します。
もちろんこれらはごくごく一部の、特にとんでもないお客様の事例であって、99%のお客様はまともです。
変なお客様に当たってしまうと腹が立ったり、悲しくなったりしますが、できる限りすぐに気持ちを切り替えて他の99%のお客様を大事にしましょう。
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