以前のコラムで安全性に問題があったり、そもそも違法な商品だったりといった理由で日本に輸入ができない商品・輸入しないほうが良い商品を紹介しました。
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安全性に問題があったり、欠陥のある製品による事故は今でも毎年何件も起こっていて、大きな事故では裁判も行われています。
https://mainichi.jp/articles/20201027/k00/00m/040/194000c
これは網戸のひもでお子さんが亡くなってしまった事故で、両親がメーカーを相手取って8,000万円の損害賠償を求めて裁判を起こした、というニュースです。
中国輸入ビジネスは中国から製品を輸入したり、中国でオリジナルのOEM製品を生産して輸入販売しています。
商品を販売する以上、副業であろうが本業であろうが立派なメーカーですので、販売する製品の安全性や違法性についてはしっかりと確認する義務があります。
これを怠ると、私たちが販売した製品でケガや重大な死亡事故が起き、それによって責任を問われ、訴えられたり逮捕される可能性もあります。
中国で作られた製品の中には危険とまでは言えないものの、安全性がいまいちだったり、中には日本の法律に適していない物もあります。
私たちはそこをきちんと判断し、見極めてから輸入しなくてはいけないのです。
今回は中国輸入ビジネスにおいて、おそらく「売る」事よりも重要な「製品の安全性や違法性の確認」について解説します。
「儲かるから」で商品を販売していると痛い目を見る
前回紹介したコラムで、輸入してはいけない商品の例として安全性に問題のある激安チャイルドシートを取り上げました。
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この頃はチャイルドシート義務化によってチャイルドシートが飛ぶように売れ、特に中国製激安チャイルドシートは中国輸入セラーにとって最高に「おいしい」商品でした。
ところがこのチャイルドシート、安全性に欠陥があり海外では死亡事故も起こっていた製品で、ついには日本でも大規模なリコールに発展しました。
大量に中国から輸入していたセラーは売る場所がなくなり、大量の在庫を抱えて大赤字になり、それが原因で廃業した方も多かったはずです。
安全性を軽視した結果なので同情はできませんが、このことから私たちが学べることはたくさんあります。
冒頭のニュースの網戸のひもは欠陥品とか法令違反の商品ではありませんでしたが、過去に何度か同製品で紐が絡まる事故は報告されていたそうです。
つまりメーカーは「安全性に疑問がある」ことを分かっていて、利益のためにリコールせず売り続けていた可能性があるのではないか、という点が裁判の争点になっています。
この問題、どの言い分が正しいのかは部外者の私にはわかりません。
ただ一つ同じ販売メーカーとして言えるのは、「自分たちの販売した商品でケガや死亡事故が起きる可能性がある」という点です。
それはどんなに安全性の高いもので、十分にこちらが配慮してもお客様の使い方ひとつでそうした事態が起きてしまうこともあるのです。
考えすぎると中国輸入ビジネスはできない
誰だって自分が売った製品で事故なんて起きてほしくないでしょうから、安全性を最重要視するのは誰でも分かっているはずです。
もし安全性を重要視していない杜撰な商売をしていたとしたら、その末路は先ほどのチャイルドシートで述べたとおりです。
そのため、安全性において1%たりとも妥協してはいけませんが、「もしかしたら」「かもしれない」といった可能性を考えすぎると、おそらくすべての商品が売れません。
安全性の基準をクリアし、法律にも問題がない商品でも「相手の使い方次第で事故が起きるかも…」なんて考えてしまえば、世の中にあるすべての商品が危険な凶器です。
そんな状態の中、一体何を売って何を売ってはいけないのか、混乱してしまう方もいるかもしれません。
その判断をするのはズバリ「勘」と「嗅覚」です。
こんなこと言うと「おいおい」と思うかもしれませんが、単純に感覚に頼れという意味ではなく、経験からくる勘と嗅覚を駆使するという意味です。
「想像力」「経験則」と言い換えたら何となく分かってもらえるでしょうか。
まず、くどいようですが商品が日本国内の安全性基準や法律に違反していないかどうかのチェックは大前提です。
そのうえで、さらに想像力や経験を働かせ、危険を察知する勘と嗅覚で「リスクの高い商品」を見分けるのです。
その一つの方法として、「この製品が破損した時にどうなるか」という想像を働かせるのが一つ。
例えば私は以前、以下のような製品の輸入を検討した事がありました。
https://chinamart.jp/taobao_item?iid=35464611505&key=146f5af50e2ca72fa926411a645466ae
逆さになって筋トレするトレーニングマシンなのですが、これ自体は現時点で安全性に問題があるとか、日本の法律に違反した商品ではありません。
また価格も安く、筋トレブームと相まって売れそうな商品でした。
ですが、私の勘や嗅覚はこの製品に対して「NO」という結論を出しましたので、輸入を断念しました。
勘や嗅覚がNOを出した理由をしっかり考えてみたところ、まず安すぎて耐久性に疑問を持ちました。
普通の製品ならともかく、成人男性一人を吊り下げたりする大きな負荷をかける製品でこの価格は大丈夫なのか、と。
また、もしそれで壊れたりしたら使用者は首から落ちて、全体重+落下の勢いが首にかかるという危険な状態になりますよね。
そうなると大けがやそれ以上の事故になる可能性もありそうです。
そう考えて私は利益が出そうなこの製品の輸入を断念しました。
もちろんこれは私の考えです。
現在Amazonで売られている類似製品でそうした事故が起きたという話は聞きませんので、ひょっとしたら私はビジネスチャンスを逃したのかもしれません。
ですがここで重要なのは私が得したか損したかではなく、「こういう考え方で商品を見極めよう」という点です。
今回はたまたま事故につながらなかっただけかもしれませんし、はたまた私の考えすぎだったのかもしれません。
無数にある製品の中で、事故が起きる製品はほんの一握り、輸入されている製品の種類を考えれば限りなく低確率です。
ですがその低確率が起きないとは誰にも断言できません。
私たちにできることは、事故のリスクを可能な限り下げてビジネスを続けていくことです。
商品を選ぶときは数値だけではなく、想像力と経験からくる勘と嗅覚も発揮し、少しでも疑問を持った商品は扱わない、というリスク回避の考え方が重要です。
ペットや子供用品は特に注意が必要!
大人が使う製品ですら、時々思いもよらない使い方などで事故が起こっていますので、子供やペットが使う製品にはさらに注意が必要です。
輸入販売される衣類には残留化学物質などの基準があり、現在日本に輸入されている製品はこの基準をクリアした製品が流通しています。(そのはずです)
特に24カ月以下の乳幼児の衣類については、「ホルムアルデヒド」についても設定されており、より厳しい基準が設けられています。
規制について詳しく知りたいという方は以下のリンクをご確認ください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/japan/regulations/pdf/free/consumer-j_2010.pdf
このように、子供や乳幼児用の製品について、成分は結構厳しい基準が設けられているのですが、一方で形状やデザインについての規制はほとんどありません。
ですが子供用の製品で起こる事故については、ホルムアルデヒドなどの化学物質よりもむしろデザインや素材が原因となっていることが多いのです。
しかもそのデザインは尖っているとかそういった明らかな危険性ではなく、可愛らしいリボンやおしゃれなフード、紐といった至って普通のデザインによる事故が多いです。
そのため規制が難しく、現在も特にデザインに対しての規制や法律はありませんが、一方で経済産業省は以下のように子供服について注意喚起を行っています。
【参考サイト】
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/keihatsu/kodomofuku/index.html
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/keihatsu/kodomofuku/pdf/kodomofukupanhuretto.pdf
規制はなく、あくまでもガイドライン止まりのため、これらに沿わない製品であっても輸入して販売することはできます。
ただ、「国が注意喚起までしている事故のリスクが高い製品」であるという点を無視してはいけないでしょう。
子供服は人気ジャンルで、Amazonでもフードや紐、リボンなどの付いた可愛い洋服がたくさん出品されており、いずれも売れています。
それを見て「儲かりそう」「みんなが売ってるし大丈夫!」という考え方は危険です。
何かあってからでは遅いのです。
もし万が一、販売停止や訴えられるような事態になれば利益どころの問題ではありません。
完全にリスクがゼロの商品はありませんが、少しでも不安な物やリスクの高い製品は「本当に売っても大丈夫か」と自問自答し、納得してから販売しましょう。
製品を売るうえで一番重要なのは、「儲かるから」という自分の視点ではなく、「買った人がどう思うか」というお客様の視点です。
お客様目線で、地道に安心安全な商品を販売する。
これが長く商売で生計を立てるコツだと私は思っています。
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