ブランド物を扱っているお店に行くと、「並行輸入品」と書かれた商品が安く売られているのを見たことありますよね。
この「並行輸入品」、みなさんは正しく理解しているでしょうか。
・「並行輸入は偽物って聞いたことがある」
・「なんだかよくわからないけど怪しい」
・「単語は知っているけどなんなのかは実はよく知らない」
こんな方も多いのではないかと思います。
2021年は新型コロナの影響で、ただでさえ縮小傾向にあった貿易がさらに縮小しています。
この影響によって今まで海外メーカー・ブランド商品を仕入れてきたルートから輸入ができなくなった、という業者やセラーの方も多いようです。
かといって、すぐに別の仕入れルートを見つけるのもなかなか難しい状況です。
特に高級ブランド側などでは販売ルートの貿易量が縮小しても、ブランドの価値を維持するために安易に新規販売ルートに商品を乗せないからです。
そのためセラーも、今の仕入れルートで仕入れができなくなったからと言ってすぐ他の仕入れルートを見つけるのも難しいです。
そんな状況になったとしても、「並行輸入品」について正しく理解しておけば意外なルートから、安く海外メーカー・ブランド品が手に入るかもしれません。
また、これから海外製品を扱おうと思っている方も、「並行輸入」については正しく知っておく必要があります。
今回は2021年度最新版、「並行輸入」について解説します。
です。
並行輸入品とは、一言で言えば「正規代理店以外のルートから仕入れた商品」です。
メーカーやブランドの日本現地法人、つまり国内の直営店や正規代理店を通して輸入・販売されている商品を「正規品」と呼びます。
例えば「ルイ・ヴィトン 銀座〇〇店」は直営店ですので、扱っているものは当然「正規品」になります。
こうした正規品は適正な価格で輸入され、適正な価格で販売されるため、ユーザーにとって「お買い得」な商品は少なくなります。
一方で並行輸入品は、上記のような正規代理店等を通さずに輸入・販売されている商品の事を指します。
このように、例えばそのブランドがある海外へ行き、現地の直営店や代理店・名税店などで購入し、日本へ輸入したものが「並行輸入品」になります。
一般的に「並行輸入」というと海外のハイブランド品をイメージするかもしれませんが、それだけではなく家電品や化粧品、アパレル商品なども良く並行輸入されます。
こうした並行輸入品を扱う大きなメリットとしては「安く買える・安く仕入れができる」事です。
正規品を扱う直営店や正規代理店では、ブランドの価値を維持するために本社の許可なく店舗側で勝手に価格を大きく下げたりすることができません。
一方で並行輸入品を扱っているお店では、値下げをするのにブランド本社の判断や許可等が必要無く独自の判断で価格を下げられるので、正規店より安く買うことができます。
特に元々高価なブランド品などは数%安いだけでもかなり安くなります。
これが並行輸入品のメリットです。
ちなみに、「平行」輸入と書いたり、認識したりする人が多いのですが、正しくは「並行」輸入です。(Amazonでも何万件もの誤字がありました)
「並行」は並んで進んでいる様子、つまり2つのルートが並んで存在するので並行輸入と言います。
一方で「平行」は主に図形などに対して使う言葉で、決して交わらない2本の線を表す言葉なので物販などの商品の取り扱いでは使いません。
もし並行輸入品を「平行輸入品」と書いて出品してしまうと、恥ずかしいだけではなく出品者の常識を疑われ、購買率が下がる可能性があります。
誤字脱字が多いセラーから、高級ブランドや高額家電なんて怖くて買えないですよね。
並行輸入品を販売する場合は、記載間違いには注意しましょう。
くらでも商品を仕入れることができます。
ブランドの日本法人や正規代理店が無い場合、並行輸入にはならない
海外から直接買い付けて輸入したものを並行輸入品と言いますが、海外から直接買い付けて輸入しても「並行輸入品」にならないケースがあります。
それは「日本に法人や正規代理店・直営店を持っていないブランド」の場合です。
この場合は単なる「輸入」で、「並行輸入」とは言いません。
並行輸入とはあくまでも国内に正規代理店があるにもかかわらず、別のルートで「並行」して輸入する事を指すからです。
この辺もややこしいですが覚えておきしょう。
やってはいけません。
並行輸入品は偽物なのか?
未だに「並行輸入品は偽物」という認識を持っている方も多いようです。
ただし、先ほどの説明からわかるように、「正規代理店を通していない=偽物」というわけではありません。
海外の直営店や正規代理店で購入し、日本に輸入した「並行輸入品」の場合、日本の代理店を通していないので「正規品」とは言えませんが、本物か偽物かで言えば確実に本物です。
ただし並行輸入品は、仕入れ方によっては偽物が混じるリスクもゼロではありません。
ここが「並行輸入品は偽物」と誤解されてしまう理由です。
というのも、例えばネットで現地の「正規代理店」を謳うお店から仕入れた場合、その商品が本当に本物であるかどうかはわかりません。
もしかしたら正規代理店は嘘で、良くできた偽物を送ってくるかもしれません。
このように、そのブランドやメーカーの直営店以外の購入では、仕入れ過程で偽物が混じる可能性が0ではないわけです。
「日本直営店購入の【正規品】」は100%本物で間違いありませんが、「海外買い付けの【並行輸入品】」については100%とは言い切れなくなるというわけです。
以上の事から「並行輸入品=偽物」でないことはおわかりいただけたでしょうか。
なかなか曖昧な表現で難しいのですが、とりあえず「正規品=本物」「並行輸入品=偽物」という単純な図式ではないことは理解しておいてください。
海外の正規販売代理店や直営店で買って輸入したものは「並行輸入品の本物」です。
海外製品を扱う方は、この微妙なニュアンスや定義を覚えておきましょう。
なお、100%確実に本物を並行輸入品で扱いたい場合、一番確実な方法が「ハンドキャリー」です。
ハンドキャリーとはネットで買ったり、輸入代行を通したり、知人に頼んだりせず。自分自身が海外現地に行き、現地の直営店で購入した商品を日本に持ち込む方法です。
これなら偽物が混じる隙はありませんし、確実正規品です、と胸を張って販売できますね。
ネット仕入れでは偽物を見分ける方法はない!
並行輸入品は本物もある一方で、偽物が混じるリスクもある、と書きました。
では一体どういうタイミングで偽物が混じるのかというと、ハンドキャリーの逆で第三者の介入のある取引、例えば「ネット購入」などです。
現在、多くのブランド品が様々なサイトで手軽に購入することができます。
ハンドキャリーが一番確実とはいえ、毎回現地に飛んで仕入れるというのも個人ではなかなか難しいと思います。
そんな時に日本に居ながらにして商品が買える通販サイトは便利ですね。
ですがサイトの中には「正規品」「正規代理店・直営店購入」を謳いながら、コピー品(偽物)を販売している悪質なサイトもあります。
こうしたネットで購入、または仕入れをしたい方からよく「偽物を判別する方法はあるの?」と聞かれます。
これについては残念ながら不可能です。
ネットで購入する以上、偽物混入のリスクを0にすることはできません。
ブランド品販売サイトは、当然ながらどの店も「本物」「正規品」を謳って販売しています。
これは本当に正規品を扱っているサイトでも、偽物を売っているサイトでも同様で、悪質なサイトが「偽物を売っています」なんて文言を掲げるわけがないですね。
ではその悪質なサイトでどうやって見分けるのか。
写真で本物かどうか確認しても実際仕入れたら届いたものは偽物だったとか、素人では判別できない精巧な偽物、いわゆる「スーパーコピー品」が送られてきた、なんてケースもあります。
つまりサイト上の画像やサイトを見て、本物を扱っているお店かどうかを確認したり証明させたりすることは不可能なのです。
一応偽物のリスクを下げる手段として「異常に安い価格で販売されているお店で買わない」「信頼できるショップで買う」という方法があります。
ですが「じゃあ高い価格で売られているサイトは安心か」と言えばそうでもありませんし、「信頼できるショップは何を基準に確認するのか?」という話になります。
一番信頼できるショップは当然そのブランドが商品チェックを行っている正規代理店、直営店になりますが、それでは安く買ったり仕入れたりはできません。
並行輸入で安く商品を仕入れようと思ったら、どうしても多少なりとも偽物リスクを踏まざるを得ないのです。
購入後に偽物かどうかを判断できる?
これも良く聞かれる質問です。
ロゴが違うとか、材質が違うといった質の悪い、明らかな偽物であればわかるかもしれませんが、現在では一流鑑定士が騙されるほど精巧な「スーパーコピー品」も出回っています。
当然ながら私を含め、ほとんどの人が鑑定士ではないと思うので、私たちが確実に真贋を判別するのはほぼ不可能です。
これについてはネット上でも色々な判別方法が散見されますが、当然すべてをあてにすることができません。
例えばよく言われているのが「質屋やリサイクルショップなどの買い取り専門店で値段が付けば本物、付かなければ偽物」という方法もあまりあてになりません。
質屋や買取店は「買取のプロ」であって「ブランドのプロ」ではない
質屋やリサイクルショップ、買い取り専門店でブランド品を査定に出すと「〇〇円」と買い取り額を提示される、もしくは「うちでは買い取れません」という査定結果が出ます。
ですがこれはお店側で「本物か偽物か」という「鑑定」をしているわけではありません。
・「限りなく本物の可能性が高いから値段をつける」
・「限りなく偽物の可能性が高いから買い取れない」
ということをお店ごとに「判断」をしているにすぎません。
買い取り査定をするお店の方は、勉強しているとはいえブランドの社員ではないため、「本物」かどうか鑑定できませんし、そもそもしてはいけないことになっています。
あくまでも「買い取って販売できる品かどうか」を判断しているだけです。
簡単に言えば「本物(偽物)だろう」というわけです。
お店側も「本物だけど買い取れないという判断をする」「偽物だけど気が付かず買い取ってしまう」という可能性だって0ではないのです。
もちろん明らかな本物、もしくは明らかな偽物であれば、リサイクルショップの査定も判断基準の一つとしては有効だと思います。
ただこの方法は100%確実でないばかりか、お店に持ち込む手間もかかりますし、何よりお店に対して売る気が無いのに査定してもらう「冷やかし」になってしまいます。
迷惑が掛かりますので、「本物かどうかを知りたい」というだけでお店に査定してもらうのはやめましょう。
ブランドのアフターサービスに出すと真贋が分かる可能性がある
ハイブランドでは製品を修理する「アフターサービス窓口」を設けているところがあり、ここに出すことで本物かどうかわかる可能性があります。
というのも、特に高級ブランドでは「本物であれば修理対応、偽物の場合対応しない」という原則があるからです。
そのため、「愛用していた製品をアフターサービスに出したら偽物だと分かった」なんてパターンもあります。
それを利用して修理に出してみて、「うちでは対応できません」と言われたら、その製品はほぼ間違いなく偽物であると言えるでしょう。
こちらはリサイクルショップなどと違い、そのブランドのプロが本物かどうかを「鑑定」するので、判別方法としては非常に確率の高い方法です。
ただしこの方法は当然修理に出せるものでないと使えませんし、送るのにも時間と料金がかかります。
また、「長く使っていただいた製品を修理する」ためにあるアフターサービス窓口本来の趣旨にそぐわない方法ですので、おすすめできません。
本当ならブランドで「本物かどうか鑑定します」みたいなサービスがあれば一番なのですが残念ながらそういったサービスを提供しているブランドはありませんでした。
並行輸入品を仕入れる最注意すべきポイント
最後に並行輸入品について注意すべきポイントをまとめました。
偽物のリスクは必ず頭に入れておく
先述しましたが、並行輸入品は安く買えるメリットがある半面、流通過程のどこかで偽物が紛れ込む余地もあります。
基本的には並行輸入品であっても、海外直営店などのしかるべき場所から仕入れた物であれば本物です。
ですが、現地に赴き、自分自身の足と目で仕入れた物でない限り、偽物をつかまされたり、業者間を行き来するうちにどこかですり替えられたりする可能性は決して0ではありません。
並行輸入品を買う、という方法は、ブランド品を安く買える魅力的な方法ですが、「偽物を掴むリスクも飲み込む」と同義です。
偽物リスクに関しては、できる限り対策をしてリスクを下げるようにする、くらいしか対策がありません。
なお、万が一偽物を買ってしまった、もしくは売るつもりで仕入れてしまった場合、たとえどんなに高いお金を出したものでも「即刻廃棄処分」してください。
間違っても「ヤフオクやメルカリで売ろう」なんて考えてはいけません。
偽物の販売はどんな理由、事情があろうとも第三者に販売した時点で犯罪となります。
詐欺罪で逮捕される可能性や、著作権侵害でメーカーから莫大な損害賠償請求をされる可能性もあります。
友人や家族に無料で譲っても、その友人や家族がフリマアプリなどで販売してしまう可能性もあるので絶対にNGです。
とにかく偽物と気づいたら、全部廃棄処分しましょう。
並行輸入品は正規店のアフターサービス対応に差が出る場合も
偽物は正規店のアフターサービスを受けられないケースが多い、という話を先ほどしました。
さらに並行輸入品も、たとえ海外の直営店から購入した本物であってもアフターサービス対象外となることがあります。
時計ブランド「フランクミュラー」や、高級調理器具ブランド「ル・クルーゼ」など、特に「高級ブランド」に見られる対応で、並行輸入品はたとえ本物であっても修理対応してもらえません。
一方で、「並行輸入品でも本物であれば受け付ける」ブランドも数多くあります。
ただしこの場合、「並行輸入品」と「正規品」で料金に差が出ることがあります。
もし並行輸入品を販売する場合はこの点にも注意し、あらかじめ確認しておいて販売時は忘れずに明記しておきましょう。
最後に
今回は海外ブランド品を仕入れる時に必須になる知識、並行輸入品について解説しました。
ちょっとややこしい「並行輸入」ですが、正しく理解しておくとブランド物を購入する際や、仕入れの際に安く買うための選択肢が増えます。
・正規品は日本の直営店や正規代理店で購入したもの
・並行輸入品は海外直接買い付けなど別ルートで仕入れた物
・並行輸入品は偽物ではないが偽物が混じるリスクがある
・並行輸入品は価格やブランド保証対応などが正規品と異なる
このように理解しておいてください。
もちろん価格を抜きにすれば、100%確実に本物で保証もきちんと受けられる直営店や正規代理店販売の「正規品」の方が安心なのは言うまでもありません。
ですが正規品は安く買えませんし、物販という視点で考えたときも正規品を仕入れて利益が出せる場面というのはほぼないので、「並行輸入品」という選択肢も覚えておきましょう。
コロナの影響で輸入関連は混乱が続いています。
このような状況の中、生き延びるために必要なのは「知識」です。
コロナの影響で少し時間が空いてしまったら、この機会に普段学べない単語や仕組みを勉強してみてはいかがでしょうか。
コメントを残す