輸入ビジネスはその名の通り、海外から様々な商品を仕入れるビジネスです。
自分の得意なジャンルだけ仕入れて勝負できれば理想的ですが、基本は「売れそうなものはなんでも仕入れて売る」スタイルになると思います。
ですが、仕入れる商品のジャンル、種類によっては輸入が難しい、もしくは利益を出すのが難しい商品も多数あります。
今回は輸入ビジネスにおいて、厄介な4種類の商品について解説します。
「輸入できない」ではなく、「輸入が難しい」もしくは「輸入・販売はできるが難易度の高い」製品です。
違法薬物や危険物のように何が何でも取り扱うべきではない、というものではありませんが、始めたばかりの初心者や小資本事業者が手を出すべきではないでしょう。
輸入ビジネスに取り組もう、新しいジャンルの商品を仕入れようという方は必ずチェックしておいてください。
この記事の目次
体温計やコンタクトなどの「医療機器・医療用具」
医療機器は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の規制対象になります。
長い法律ですが略して「薬機法」と言います。(少し前は薬事法と言いました)
これら医療機器を輸入販売するためにはこの薬機法に基づいて、厚生労働省から同法の許可を受けなければいけません。
医療機器や医療用具というと、お医者さんが使用する注射器やメスなどの手術用具などを想像しがちですが、その定義はかなり広いです。
中には日常生活でよく見るような、意外な物が医療機器や医療用具として定義されていて、輸入しようしたらアウト…なんてケースも多々あります。
身近な例で行くと、例えば以下の製品が該当します。
・体温計(ペット用含む)
・コンタクトレンズ(度数が入っていない物も含む)
・コンドーム
・血圧計
・補聴器
特に体温計やコンドーム、若い方に人気のおしゃれなカラーコンタクトなどは海外で安く売られており、また需要も高いため仕入れしがちです。
また最近ではコロナ禍で「パルスオキシメーター」の需要が高まっていますが、こちらも医療機器に該当します。
ちなみにペット用の体温計などは厚生労働省ではなく農林水産省の管轄になりますが、許可が必要なこと、許可取得のハードルが高い点は全く一緒です。
医療機器は「輸入できない」ではなく「許可さえあれば輸入できる」という意味ですが、ハードルは非常に高いので一般の方が手を出すべきではありません。
なお、マスクや防護服は「衛生雑貨」扱いで、医療機器には該当しないため輸入販売に特段注意や問題はありません。
ただしマスクに関してはコロナ禍の品薄時に「国民生活安定緊急措置法」の対象となり、販売に規制が設けられた経緯がありますので注意しましょう。
レーザーポインターなどの「携帯用レーザー応用装置」
中国などで安く売られているレーザーポインターは「携帯用レーザー応用装置」というカテゴリーに分類され、消費者生活用製品安全法の特定製品として規制対象になっています。
簡単に言えば「基準以上の強力なレーザーが出る製品は輸入・販売ができませんよ」という意味です。
これは過去、規制のない時期に、海外から強力なレーザーを照射するレーザーポインターが輸入・販売され、照射された方が網膜を損傷すると言った事故が起きた経緯からです。
そのため現在レーザーポインターは光の強さ(危険度)でクラス分けされ、規制の対象となっています。
現在日本国内では、「光強度が1mWまでの製品」しか販売許可は下りないようになっています。
光の強さが1mWを超える製品は販売自体ができませんので注意しましょう。
また、携帯用レーザー応用装置はレーザーポインターだけでは無く、一部のプロジェクターなども規制対象です。
【主な携帯用レーザー応用装置商品】
・レーザーポインター
・レーザー照準器
・レーザー付きの放射温度計
・レーザー走査型の携帯プロジェクター
これら携帯用レーザー応用装置も出力が基準以内であれば、「許可や届け出」によって製造・輸入が可能です。
ただし製造・輸入するためには以下のような遵守すべき項目が非常に多く大変です。
・届け出
・技術基準の適合義務
・検査義務
・適合後PSCマーク表示義務
・注意事項記載義務
個人的にはこの苦労を乗り越えてまで取り扱うべきジャンルではないと思います。
なお、販売許可が下りるのは光強度1mWまでの製品ですが、「個人の所持」については特に規制がありません。
海外では1mWを超える高出力のレーザーポインターが普通に売っていますし、サイトを通せば簡単に買えてしまいます。
また許可は絶対おりませんが、Amazonやメルカリを通せば簡単に販売もできてしまいます。(もちろん完全に違法です)
つまり「輸入⇒販売」のルートは繋げることができてしまいます。
そのため、ネットではこうしたルートで輸入者が違法と気づかず高出力の製品を販売しているケースも散見されます。
こうした海外製の強力なレーザーポインターは、段ボールを燃やしたり、花火に着火できるほど危険な製品です。
当然これらの違法な製品を販売すると逮捕されますし、Amazonや楽天市場のアカウントを凍結される可能性もあり、リスクが大きすぎます。
なにより、もし危険なレーザーポインターを販売してしまい、購入者が大きな事故を起こした場合、輸入販売元(つまり販売したセラー)が責任を負わなければいけません。
賠償問題になればビジネスどころではありません。
基準が厳しく、基準内でも許可や検査が面倒で、費用も労力も時間もかかるレーザーポインターなどの機器は、よほど戦略的に販売しないとビジネスとして成り立たないでしょう。
バッグや財布・靴などの「本革製品」
海外から商品を輸入する際、商品の種類に応じて「関税」がかけられます。
関税はただただ製品にかけられるので、輸入者からしたら1円でも払いたくない物ですし、払うにしてもできる限り安いほうが良いものです。
その分コストカットになり、利益や商品価格に反映できるからです。
関税は商品に応じて細かく設定されていて、その税率は数%から数十%までピンキリですが、その中でも特に高い関税がかけられるのが「革製品」です。
革製品はいわゆる本革(動物の皮を使った製品)が対象で、ポリウレタンやナイロンで作られた「合皮(フェイクレザー)」は対象外です。
ただし、合皮でも一部に本革が使われている、もしくは完全合皮であっても「革製品」と判断されてしまうケースもありますので、注意しましょう。
一般的な工業製品の関税は多くの製品で1ケタ台なのに対し、革製品は低いものでも15%前後と飛び抜けて高い関税がかけられています。
しかも製品によってはさらに高くなるケースも。
例えば革のバッグや財布は14~16%で、これだけでも異常に高い税率ですが、「革靴」「ブーツ」になると税率は「30%、もしくは1足4,300円の高いほう」に跳ね上がります。
これは10,000円の革靴なら4,300円、5,000円の革靴なら1,500円もの莫大な関税がかけられる計算です。
個人や小資本のセラーが、こんな税率の商品を輸入してビジネスを成立させるのはほぼ不可能です。
本革製品は先ほどの医療機器やレーザーポインターみたいに特別な許可や検査が必要なものではありませんが、利益が出しにくいので手を出さないほうが無難です
なお、輸入する国によっては優遇措置があり、安い関税で革製品が輸入できるケースもありますので、もし本気で革製品を輸入するのであれば安い国を調べてみてください。
主にギター・ベースなどの「楽器類」
初心者の方にとっては意外かもしれませんが、輸入ビジネスの中でも「楽器」は人気ジャンルの一つです。
コロナ禍で外出ができない方が趣味で始めるケースが増えてきて、需要も急増しているため、例年以上に熱いジャンルとして多くの方が楽器の輸入ビジネスに参入しています。
ギターやベース、電子ピアノや管楽器などの楽器は、海外を探せば安くて品質の良いものがたくさん見つかります。
仕入れ先をしっかりと見極め、保管スペースなどの問題がクリアできれば商材として決して悪い選択肢ではありません。
ところが楽器も種類によっては注意が必要な製品があります。
特に注意が必要なのがギターやベースといった「木材」を使用した楽器です。
ギターやベースの材料には、よく「ブビンガ」や「ローズウッド」といった種類の木材が使用されています。
ところが実は、2017年にこのブビンガとローズウッドがワシントン条約の規制対象になりました。
輸出許可と輸入許可を取ることで輸入は可能でしたが、許可を得るには時間も費用も労力も莫大にかかります。
そのため、2017年以降多くの業者がギターやベースが輸入できなくなり、楽器の輸入ビジネスをやっていた方は大打撃を受けたわけです。
ただしこの規制は2019年に条件が緩和され、現在ではある程度普通に輸入できるようになりました。
とはいえ、いつまた規制の対象になるかわかりません。
革製品や植物、木材と言った「自然物」を利用した製品は、ある日突然ワシントン条約の規制対象になる可能性があるので注意が必要です。
実は私も一時期、楽器輸入に興味を持ち、色々と調べたことがあります。
ワシントン条約に引っかかりそうなギターもしっかり調べましたが、それ以外にも気になったのがトランペットやフルートなどの管楽器です。
こうした管楽器は口をつけて演奏するものなので、「食品衛生法」に抵触するのではないかと思ったのです。
結論から言えば、東京検疫所に直接問い合わせて確認したところ「食品衛生法の対象ではない」という回答を頂いています。
東京検疫所:https://www.forth.go.jp/keneki/tokyo/kanshi_hp/a013.html
※電話でも問い合わせを受け付けてくれるようです。
今回は杞憂でしたが、この条件もいつ解釈が変わるかわかりません。
こうした経験から、私の中で「楽器輸入は面倒や心配事が多い」という「厄介なカテゴリー」と認識するようになりました。
おすすめしない、とまでは言いませんが、もしこれから楽器輸入ビジネスをやりたい、と思った方はこうしたトラブルや心配事が多いジャンルであることは覚悟しておいて下さい。
最後に
輸入ビジネス最初の難関は「何を仕入れるか」です。
基本的には「売れそうなものをなんでも仕入れる」ですが、ほかの人がたくさん仕入れている商品を仕入れてもうまくいかないでしょう。
そのため、できる限り他の人が「面倒」「儲からない」と考えて仕入れない、癖のある商品も絡めて仕入れ、うまく工夫して売りぬくなどの工夫が求められます。
とはいえ、他の人たちが「訳あって」絶対手を出さないような商品を仕入れても、これまたうまくいきません。
・医療機器・医療用具
・携帯用レーザー応用装置
・本革製品
・楽器類
特に今回紹介したこの4つのジャンルは、おそらくほとんどの人にとって稼げない、稼ぎにくい商品でしょう。
少なくとも初心者や小資本のセラーが手を出すべきジャンルではありません。
最初の仕入れでこういった製品を仕入れてしまうと、リカバリーができず事業そのものが終わってしまう可能性があります。
このほかにも初心者向けではない厄介な商品ジャンルはいくつかありますが、まずはこの4つを覚えておきましょう。
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